まず重要なこととして、ADHDは単一の特性ではありません。
現在の研究では、
・注意制御
・実行機能
・報酬処理
・行動抑制
・時間認知
・作業記憶
・感情調整
などの複数システムが関与する神経発達特性と考えられています。
そのため、実際には多数の特性が同時に現れます。
- 注意制御システム
-
- 特性
-
・集中維持困難
・気が散りやすい
・見落とし
・忘れ物 - 仕組み
-
脳は大量の情報の中から重要な情報だけを選びます。
- 通常
入力情報
↓
選別
↓
注意維持
という流れがあります。
ADHDではこの調整が不安定になりやすく、
注意不足
ではなく
注意制御の変動
と考えられています。
- 注意変動
-
- 特性
-
・集中できる日とできない日の差
・環境で能力差が大きい - 仕組み
-
研究では
Attention Variability
と呼ばれます。
平均的な集中力より
集中力の揺れ幅
が特徴です。
- 過集中
-
- 特性
-
・時間を忘れる
・周囲が見えなくなる
・没頭 - 仕組み
-
興味対象
↓
報酬系活性化
↓
注意系活性化により発生します。
ADHDは
集中できない
ではなく
集中のコントロールが難しい
という考え方が近いです。
- 行動抑制
-
- 特性
-
・思いつき行動
・割り込み
・衝動買い - 仕組み
-
脳には
実行アクセル
と
実行ブレーキ
があります。
ADHDではブレーキ側の調整効率に差異が報告されています。
- 多動
-
- 特性
-
・落ち着かない
・じっとしていられない - 仕組み
-
覚醒レベル維持機能が関係します。
成人では
身体多動
より
思考多動
が多くなります。
- 思考多動
-
- 特性
-
・頭の中で考えが次々出る
・連想が止まらない - 仕組み
-
複数ネットワークが同時活動しやすい可能性があります。
- 作業記憶
-
- 特性
-
・今考えていたことを忘れる
・複数作業が苦手 - 仕組み
-
脳のメモ帳機能です。
保持しながら処理する能力です。
- 計画機能
-
- 特性
-
・計画作成困難
・計画維持困難
- 仕組み
-
前頭前野による未来予測機能が関係します。
- 開始困難
-
- 特性
-
・やるべきことを始められない
- 仕組み
-
能力不足ではなく、
- 開始スイッチ
-
の問題と考えられています。
- 優先順位付け
-
- 特性
-
・何から始めるかわからない
- 仕組み
-
重要度評価システムの負荷増大が関与します。
- ⑪ 時間認知
-
- 特性
-
・遅刻
・時間見積り誤差 - 仕組み
-
研究では
Time Blindness
という概念で説明されます。
現在と未来の距離感の認識に差が生じます。
- ⑫ 締切直前集中
-
- 特性
-
・締切前に急激に集中
- 仕組み
-
緊急性が報酬価値を高めるためです。
- ⑬ 報酬系
-
- 特性
-
・興味依存
・退屈回避 - 仕組み
-
主にドーパミン系が関与します。
報酬価値が高いと能力が大きく上がります。
- ⑭ 新奇性探索
-
- 特性
-
・新しいもの好き
・変化を好む - 仕組み
-
新規刺激が高い報酬信号になるためです。
- ⑮ 刺激探索
-
- 特性
-
・刺激を求める
・単調さが苦手 - 仕組み
-
脳の覚醒水準を最適化しようとする可能性があります。
- ⑯ 発散的思考
-
- 特性
-
・アイデア量が多い
・独創性 - 仕組み
-
異なる概念間の結び付きが起こりやすい可能性があります。
- ⑰ 認知柔軟性
-
- 特性
-
・固定観念に縛られにくい
- 仕組み
-
複数視点の活用が関係します。
- ⑱ パターン発見
-
- 特性
-
・関連性発見
・新しい組み合わせ - 仕組み
-
広範囲な連想ネットワークが関与すると考えられています。
- ⑲ 感情調整
-
- 特性
-
・感情変動
・熱意
・落胆 - 仕組み
-
前頭前野と感情系ネットワークの調整が関与します。
- ⑳ 共感性
-
- 特性
-
・他者感情への強い反応
- 仕組み
-
研究結果は一定ではありませんが、一部で関連が報告されています。
- ㉑ 睡眠リズム
-
- 特性
-
・夜型傾向
・睡眠時刻変動 - 仕組み
-
体内時計関連システムとの関係が研究されています。
- ㉒ 感覚処理
-
- 特性
-
・音
・光
・触覚-
への反応の個人差
-
- 仕組み
-
感覚フィルタリング機能が関与すると考えられています。
- ㉓ 自己モニタリング
-
- 特性
-
・進捗把握困難
・状態把握困難 - 仕組み
-
自己観察機能の負荷増大が関係します。
- ㉔ 神経伝達物質
-
研究で重要視されるもの
・ドーパミン
・ノルアドレナリンこれらは
注意
報酬
覚醒
実行機能に深く関与します。
- ㉕ 脳ネットワーク
-
研究で繰り返し報告される領域
・前頭前野
・線条体
・帯状回
・頭頂葉
・小脳重要なのは、
「特定部位の異常」
ではなく
「ネットワーク全体の調整特性」
という考え方です。
現在の研究で最も包括的な理解
ADHDとは
「注意欠如」
ではなく、
自己調整システムの神経発達特性
です。
その中心には
・注意制御
・行動抑制
・実行機能
・報酬処理
・時間認知
・感情調整
・作業記憶があり、これらの組み合わせによって非常に多様な特性が生まれると考えられています。これは現在の主要な研究知見とおおむね一致する理解です。
